良い声の秘訣は内面から! "ベジータ"堀川りょうさんインタビュー
良い声になりたい人へ向けて、このコラムではこれまで声のメカニズムや具体的なレッスン方法を紹介してきた。しかし、いい声になるためには心持ちも重要だ。自分の声とどう向き合う?人に気持ちを伝える声の出し方は?今回は、良い声になるための内面からのアプローチについて、声優の堀川りょうさんにお話を聞いてみた。
ベジータは「4週間で死ぬ」はずだった!?
-堀川さんといえば、やっぱり「ドラゴンボール」のベジータ役です。役を引き受けた際は、どんなことを考えましたか?
ベジータの役はオーディションを受けたわけではなく、急に振られた(オファーがあった)んですね。役を受けた当時、悪役はだいたい4週間だけ登場して死んでいくパターンが多かった。だから、どうせ4週間で死んでいくなら、単なるチンピラではなくて巨悪になりきろうと思ったんです。それまで正義の味方みたいな役とか中性的な役、おちゃらけた役を演じることが多かったので、ちょっとフラストレーションが溜まっていたのもあるかもしれませんね。「俺、悪役もできるんだぜ」っていうようなね。
-しかし、ベジータは4週間では死なず……。
原作の連載がオンエアと割と並行していたので、どうなるか知らなかったんですよね。いつの間にかレギュラーになって、いつの間にか良い人になっちゃって(笑)。でも、当初演じているときは、全員ぶち殺してやろうって思いで演じていたし、「地球のみならず宇宙はすべて俺のもの」って思ってやっていました。そう思わないとできないですよ。「そんなわけないじゃん」って演者が引いちゃうと、役は成立しない。見ている人にも伝わらない。だから、声優はボイストレーニングも必要だけど、ハートを伴う声を出すためのトレーニングも大事ですよね。
ボイストレーニングは継続が命!
-それでは、毎日のボイストレーニングを教えてください。
まず、徹底的に母音の5音を鍛え上げる練習を毎日行います。具体的には「あいうえお いうえおあ うえおあい えおあいう おあいうえ」、これをワンブレスで発声。次にカ行、サ行、タ行……すべてワンブレスで順に発声していきます。なぜ母音を鍛えるかというと、喋るときって割と母音をぞんざいに発音しているんですよ。母国語だと前後の文脈で理解しているから聞き取れるんだけど、発音だけだと結構ルーズだったりする。でも、例えば「つーーー」ってロングトーンで発声したときに、最後に人間の耳に残るのは「う」の母音なんです。だから、母音をクリアに発声することが、聞き取りやすい良い声を出すことにつながるんですね。
-毎日、何分間ぐらい発声練習するんですか?
何分とは決めていないですね。長い時間をかけるよりも、毎日続けることの方が大切だと思います。(堀川さんが学院長を務める「インターナショナル・メディア学院」に)レッスンに来ている子に、最初から30分やれって言っても続かない。最初は30秒から始めよう、ただし毎日続けようなって言いますね。30秒が毎日続けられたら、1分を毎日。それを続けていく。毎日続けることで、歯磨きや洗顔、食事と同じぐらいまで生理的なレベルに落とし込んでいくんです。生理的なレベルに落とし込むということは、「やらないと気持ち悪い」と感じるぐらいまで続けることですね。そうなったら、トレーニングを楽しめるようになりますから。楽しめるようになったら、自分で努力して工夫し始める。そこまでいくと、「毎日必ず1時間トレーニングしよう」なんて思わなくても、自然と続くんですね。
「芝居するときに芝居するな」の真意は?
-ちょっとメンタル的なお話になってきたので、ハートを声に込めるためのトレーニングについても教えてください。
役作りの際に、「このキャラクターがどんな声なのか」って考えることは、実はあまりないんです。考えるのは、「どんな人生を生きてきて、どんな価値観や哲学を持っているのか、どんな好み、思考であるのか」。役作りというほど大げさなことではないんですけれど、こういった順序を経てその役の気持ちを考えるのが僕のアプローチの仕方なんです。ただ単にカッコ良さそうな声を表層的に作っても、それではハートが伝わらないと思うんですよ。
-声だけ変えるのではなくて、気持ちから変えるということですね。
レッスン生に「芝居するときに芝居するな」って言うこともありますね。ガチンコで、本当にそう思ってる?って。思っていないなら、そんなセリフを言ったらいけない。声って結局、自分の肉体を通して出てくるものだから、まずは自分の中でイメージをふくらませないといけない。声優でなくて、一般の方でもそうだと思います。「モテ声」かどうかって、結局、気持ちが伝わるかどうかでしょう。
声はコミュニケーションのツール
-声総研では「モテ声」を一つのポイントにしているので、そのお話、とても気になります。
例えば、ダミ声って悪声って言われることが多いですが、その人が本気になって、自信を持って気持ちを伝えている声であれば、それは悪声ではない。むしろ味のある声に聞こえるんじゃないかと思います。堂々と自信を持って喋っている人に対して、「声が悪いから格好悪い」なんて誰も思わないですよ。
-自分の声にコンプレックスを持っている人も多いです。
コンプレックスっていろいろありますよね。僕も自分で自分の声が良い声だとは別に思わないし。でも、じゃあ声が変わればそれでOKなのかと言ったら、疑問ではあります。コンプレックスって、自分に自信がない、嫌われたくない、好かれたいっていう気持ちだと思うので、声のコンプレックスを感じている人に僕なりのアドバイスをするのであれば、「自分がなりたい人物のイメージを明確に持って、その人物がどんな声なのかを思い描いてみてください」ということでしょうか。それから、声に自信がなくて喋らなくなると、余計に発声が悪くなるという悪循環が生まれる。だからできるだけ声を出す機会を作る方がいいですよね。
-「声総研」の取り組みを通じて、これから声に関心を持つ人も増えるかもしれません。
僕がこの学院を立ち上げたときに思ったのは、プロを目指す人だけではなくて、一般の方で「コミュニケーションをうまく取れるようになりたい」という方にも利用してほしいということなんです。「人前で大声が出せるようになりたい」とか、「相手の目を見てちゃんとものを言えるようになりたい」って大切な気持ちですよね。声はコミュニケーションのツール、コミュニケーションは気持ちを伝えることだから、やっぱり声って気持ち、なんですよね。
